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東京の密集した住宅街に建つ、9住戸の賃貸集合住宅。シンボル性の強い敷地の潜在力を生かして、都市的スケールをもった建築を挿入することにより、良好な町並み形成への参加をテーマの一つとした。
一般に賃貸集合住宅では、南側バルコニーと北側外部廊下が1セットとなったステレオタイプのデザインから抜け出たものが乏しいが、この計画では新しい住まい方とデザインを試みた。建物の全体構成は3つの異なった住戸プランを1ユニットとして扱い、3つのユニットの間に2つの階段を挟む体構成とした。
一方、3つの異なった住戸はメゾネット構成など各階を横断して計画しており、外部からは窺い知ることはできない。3階住戸では、建物の外部側に配置されがちなバルコニーを居室中央に集約して中庭としており、この中庭を通して自然光が下層のメゾネット住戸に注ぐようにして、天に突き抜けた内部空間を構成した。
一般に、集合住宅では住戸へのアクセスと居室の開放方向との交錯を避けることから、建物の表情がアクセス側(一般に北)と開放側(一般に南)双方で著しく異なり、表裏の表情に乖離が発生しやすい。この結果、住戸へのアクセス側は外部廊下による水平線で、また開放側は階数と住戸数によって格子状のアーティキュレーションによって、半ば自動的にファサードが決定されてしまう。一般的なこの手法を準用すると、一軒家を1ユニットとした街並みのスケールと集合のアナロジーをそのまま建築構成に置換するかたちとなり、街並みと不用意なシンクロを起こすのが危惧された。
そこで建築形態をプリミティブに扱い、ファサードを2層に分節して大きなスケール感をもつ建物とした。外観からは、基壇の上にキャンティレバーで大きく跳ねだしたヴォリュームを載せたのこの建物を、3階建て9住戸の集合住宅と認識することは困難であり、先に述べた集合住宅機能とアクセスが引き起こす建築表現との直接的連動を見直している。
外壁の開口部分はパンチングの連続折れ雨戸となっていて、朝晩の雨戸の開閉や、蛍火のようにパンチングから漏れてくる無数の光により、住民の生活のニュアンスを建築の微妙な変化に映して街に語りかけている。 |